【はじめに】
* 科学者であれ
自分の専門ばかりでなく、時には一歩二歩引いて見てみることも必要。
部品、材料として幅広く見ることにプラスして科学者としての考え、
見方のできる人材となること。
【取り組み姿勢】
* 常に世界標準のセンターを狙い仕事を進めること。
・そのためには"徹底したベンチマーク"を行い世界の中心を知ること、
そしてその先取りを行なうこと。
・中心であり続けるには自分たちがいいというアピール、情報の開示、
他杜を巻き込んだ活動も必要である。
* 日本の開発に対する考え方は欧米とはさかさまである。
・明治維新以来、日本は欧米の模倣を行なってきた。
そのため「まず材料があり、それに合った設計をしてゆく」という
欧米流の考え方に対し、目本は「まず形があり、それに合った材料を
つくる」という逆の考え方になっている。
・今は、昔の財産で成り立っているが、このままいけば日本の技術は
東南アジア諸国にも負けてしまう。
そのことを心して技術開発に取り組むこと。
・困った設計者(生技の要求に対して順応性がなく、材技にどうにかしてくれ
とすぐ言ってくる設計者)の意向を何でも聞くのではなく、トヨタにとって
何が本当に必要か、本当にこうならなけれぱならないということを設計に
訴えること。
* 開発は、①作業性 ②生産性 ③物性の順で考えて進めること。
生技の人をその気にさせることが必要。
* 自らの手を汚して仕事を行なうこと。
そうして出た成果は、“自分がやったんだ"と社内外に上手くアピール
すること。
上手くアピールできればそれがメンバーのやる気・やりがいに繋がってくる。
* 業務は自己管理をしっかり行い、重点指向で進めること。
・何でもいいからやってみるという進め方はよくない。
目標、課題、テーマの位置付けを明確にしてから取り組む。
・重要テーマヘは件数1/3、工数50%の投入を目標とする。
* オープン&フェアな競争、つまり技術で勝負の姿勢で取り組むこと。
* 自動車会社の材料屋という意識をもって貧欲に取り組むこと。
* 工程をよく見る。
問題が起きた時は真撃に反省し、その反省事項の横展に取り組むこと。
ポイントは以下の4つ、
①慎重になること
②基本概念を押さえること
③ベンチマーク
④否定の発想
* 自由、闇達、斬新な発想で画期的テーマに取り組むこと。
20年、30年の先読みをし、プロモーターの意識に立って研究を
手がける必要がある。
将来を"空想"することが大切。
* 材料開発は自分の手で触って初めて情熱が沸く。
本質をつくには体験が必要。
【グループの運営】
* 常に経営指標の向上を目指すこと
・SLは各グループの杜長である
・「経営指標をどれだけ向上しよう、そうするために何をしなけれぱ
ならないか」を常に定量化しておくこと。
結果ではなく、計画的(戦略的)に向上を狙うべきである。
・指標は1年単位で終わるものではない。
昨年より今年、今年より来年の進化(成長)がわかるような仕事の
進め方をすること。
・アウトプットの向上意識はメンバーの活力を向上させる。
* 限られた人員で多くのアウトプットを行い誉められるには、方針・中期計画・
個別進行表のうまいマネージメント、テ-マのうまい取捨選択が必要である。
* 自己評価は定量的に分かりやすくすること。
年央での自己評価は厳しく行い、年度目標を達成するために年度末までに
何をすべきかを明確にする。
【シナリオ】
* シナリオとは熱き想いを込めたものである。
・“何が" "いつ"必要か。
それを実現するために"今何をするのか"が明確になっていることが必要。
時期が明確になっていないものはシナリオではない。
・常にアンテナを張っておき、攻めの姿勢で取り組むこと。
* ストーリー、ターゲットはシャープに、全体はシンプルに表現する。
【設計】
* (96年度末)塗装業務に関する過去のしがらみは、外からの殻は破れた。
着実に成果は出てきている。
* 今後は内からの改革を期待している。
トヨタのしくみだけでなく、他杜・海外のしくみもよく調べ、今までとは
異なった面からも見ることが必要。
【解析】
* 解析は基盤技術であり宝である。
・物事の基本の違いが判らなければいいものはできない。
何が起こっているのかが判れぱ次のやることが見えてくる。
・疑問を持つ→発見→解析→疑問→発見→解析を行なえば
新しいものが見えてくる。
・解析だけでは物はできない。
・何を創りたいか、何ができるのかを考えて実施する。
【評価】
* 部品だけでなく車両として追いかける意識が必要である。
* 評価の解析・効率・情報・安全率などを整理して、期間短縮、評価レスの良い
進め方を検討すること。
変形挙動予測などのデータを設計に提供し、試作レス化ができるように
なることが理想。
* 個人の知鐵・技術が生きる、また、一番愉快・痛快・成果が出やすい領域である。
* 生産ラインと試作レベルを見極めた評価管理をすること。
【品質対応】
* 不具合再発防止活動などで、材技が軸となって取り組んでいると認識される
ことが必要。
* DRは実施するだけでなく、「設計が心配する」ということが大切。
* 何をすれぱ不具合の木然防止ができるかできるのかをよく考えること。
1件でも不具合を起こせぱダメージは大きい。
* 品質監査室は、材料分野品質監査室として取り組むこと。
【海外業務】
* トヨタの海外部門が欧米並みに動いているか疑間がある。
世界流でなくトヨタ流に動いているのではないか。
欧米流の流れの中でそれに従ってゆくことを前提に動いて欲しい。
* 国に応じた塗装設計のやり方を標準化・ルール化してゆく。
* 本来の責任分担を明確にすること。
【規格・標準・指示書】
* 承認図=基本品質を提示し、スペシャルはやらせない。
メーカーに「自分たちで決めました」と言わせるようにすること。
* 指示書をつくるということは保証書をつくるということである。
* 設計基準、設計標準、設計マニュアル、製品規格、評価マニュアル、
製品評価等の用語をしっかり理解し使うこと。
【人材の育成】
* スペシャリストとしての力を発揮するためには、日頃の勉強が不可欠である。
人に技術を伝承するには、まず自分が新しいことを学ぶことが必要。
目々是丹精。
* プロは他人に真似のできないプロらしい仕事をする(経験、判断力)。
アマチュアはまず勉強する(先輩から技術を盗む)こと。
* 大所高所に立ち、もっと貧欲に取り組む。
遠慮せずにこうしたいと言う。
自信をもって冒険すること。
困った課題を必死に成し遂げればそれが力になる。
* 室長、SLは幅を広げようという意識、人材育成という観点に力を入れ、
まわりの環境を整えること。
* 自由闊達すぎては自分の成長を止めてしまうこともある。
グループは広がったり、締めたりの繰り返しによって成長してゆく。
* 人材育成のポイントは、実施した成果が自分の身になる。
その繰り返しが体カアップにつながることである。
【最後に】
* 技術屋として楽しい仕事をしよう。
* 仕事はその瞬間、その瞬間が魅カ的・感動的であるべきである。
【スローガン】
95年度:「世界標準のセンター先取り」
96年度:「変えよう行動・変えよう流れを」1/2mv2からmghの時代へ
97年度:「自分は何をしたか?」~21世紀ベクトルに対して~
以上はトヨタ材技時代の部長最後の年の業務点検でのコメントです。
事務局が議事録として残してくれたものを抜粋しました。
古いコピーをスキャナーで読み取り添削・修正をしました。
まだおかしなミスプリントが残っているかもしれませんが悪しからず。
何かの参考になれば幸いです。